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ひとこと法話 弘法大師作『十喩を詠ずる詩』より
2023.03.06
「我、諸法を観るに譬えば幻の如し」
弘法大師作『十喩を詠ずる詩』より
(現代語訳)私が見るに、世の中のすべては幻のようなものである。
弘法大師が人々に悟りを分かりやすく伝えるために作った漢詩です。経典の中にある10個の譬え(たとえ)をテーマに10章からなる詩で説明しています。その一つが幻であり、水に映る月です。
この詩を何度も何度も読み返していると空の思想が知識ではなく実感として身に染みわたっていく感覚があります。この写真は、水に映る街のネオンなのですが、まさに10個の比喩に取り入れたいぐらいに、いや、それ以上に適切な譬えだと感じます。
我々が現実だと思い込んでいるこの世界のすべては、この水に映るネオンのように「あるように見えるけれど実際は虚像でしかなく、因縁によってごくわずかな時間だけそこにあるように見えるだけ」なのです。
どんな豪邸も、高級車も、宝石も金銀財宝も、あの世へは持って行けません。ただ、瞬きのような生の間だけあるように見えるだけ。そのことをこの虚像は我々に教えてくれます。
そしてまた、人生は儚いからこそ美しい、そのこともまたこの虚像が物語っています。
色即是空、空即是色
密乗沙門純司書
※当山が作成した『十喩を詠ずる詩』全文現代語を当サイト「ギャラリー」にてPDFファイルを無料公開しておりますので、より詳しく学びたい方はごらんくださいませ。非商用に限り、印刷してご利用いただくことも可能です。