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仏像公開遅延の理由と東京地裁判決のご報告

2025.03.06

当寺では、多くの皆様のご支援のもと、大日如来像の再現造立を進めてまいりました。しかしながら、本来予定されていた仏像の公開が大幅に遅れていることにつきまして、皆様に深くお詫び申し上げます。この度、東京地方裁判所の判決が出ましたので、公開遅延の理由と現状について、ご報告いたします。


1. 公開遅延の原因

当寺は、2013年(平成25年)に彫刻家 大森暁生氏と契約を結び、制作期間3年、契約金額3,000万円という条件で合意し、仏像の制作を正式に依頼しました。しかし、仏像の完成は大幅に遅延し、その後、ようやく仏像の引渡日を2023年8月と合意しましたが、最終的に、同引き渡し日における仏像の引き渡しが拒否されました。その間、当寺は大森氏からの度重なる追加要求に応じ、契約金額の約3倍にあたる8,184万円以上を支払ってきました。

こうした状況を受け、当寺は、仏像の引渡しを求める仮処分を東京地方裁判所に申し立てたところ、大森氏は、突如、当初予定額の20倍以上となる6億3300万円もの巨額の残代金を主張するなどしましたが、2023年11月、同裁判所は、大森氏の主張を排斥し、「仏像を引き渡すべきである」との決定を下し、裁判所の強制執行により、正式に当寺が仏像を回収しました。


2. 現在も続く不当な公開差し止め

このようにして、仏像が東京地方裁判所の決定を経て引き渡され、当寺において公開の準備を進めていたところ、大森氏は、仏像の著作権等を主張し、その公開の差し止めを求める仮処分を高松地方裁判所に申し立てました。その結果、実質的な審理が行われないまま、拙速に公開の差し止めが認められてしまい、現在も公開が妨げられている状況にあります。

これに対し、今般、2025年2月28日、東京地方裁判所は、改めて「国分寺が本件仏像を開眼法要その他の方法で公に展示することは、少なくとも共同著作権者である国分寺による展示権の行使であり、大森氏が正当な理由なく合意の成立を妨げていると考えられる以上、大森氏が国分寺に対して著作権侵害を主張することは権利濫用に当たる」と判断しました。

また、東京地方裁判所は、残代金が6億3300万円あるとの大森氏の主張についても、プロジェクトの総事業費が1億3500万円であり、大森氏の報酬額は、そこからお堂の改修費用等(5000万円超える)を控除した残額に止まるとの共通認識があったことや、大森氏も、計4000万円を受領した2020年10月の時点で、「すでに予定を大幅に上回る製作資金を受領している」と述べ、その受領額ですら過分なものであると認識していたこと等を踏まえ、すでに支払われた8000万円以上の金額をもって、製作費相当額の代金は支払われていると認定し、大森氏の残代金に関する主張を排斥し、併せて、仏像の所有権も当寺にあると判断しました。

この東京地方裁判所の判断を踏まえ、高松地方裁判所においても、早期に同様の判断が行われ、不当な公開差し止めが解除されることが強く期待されます。

しかしながら、この不当な公開差し止めの申し立てによって、当初の公開予定日であった2023年10月7日からすでに約1年半が経過しています。その間、ご寄付者の皆様の中にはご高齢の方も多く、公開を楽しみにしていたにもかかわらず、仏像を見られぬままご逝去された方も多数おられます。この取り返しのつかない被害が今なお続いており、深く憂慮すべき事態です。

さらに、当寺には今なお仏像の公開についての問い合わせや苦情が日々多数寄せられており、多くの方々が公開の実現を切望されています。当寺としても、これ以上の遅延によって支援者の皆様の期待を裏切ることのないよう、速やかに公開を実現するため尽力しております。上記のとおり、その成果が今回、東京地方裁判所の判断として示されており、当寺は、今なお続く、高松地方裁判所の公開差し止めを速やかに解除して頂きますよう、誠心誠意、対応を継続して参ります。


3. ご支援いただいた皆様および報道関係の皆様へ

本件仏像は、単なる宗教的な対象にとどまらず、数万人ものご寄付者の想いが込められた貴重な文化財であり、その公開は広く社会の利益に資するものです。当寺は、仏像の公開を通じて、皆様のご支援に感謝の気持ちを表し、地域の文化と信仰の場を守ることを使命としております。

しかしながら、大森氏による一方的な契約違反と法的な妨害により、公開が妨げられている現状を、どうかご理解いただきたく存じます。当寺は、裁判所の判断に基づき、正当な権利を行使し、仏像の公開を実現するための法的対応を誠心誠意、続けてまいります。皆様の温かいご支援とご理解を賜りますよう、何卒、お願い申し上げます。

また、マスコミ・報道関係者の皆様におかれましては、本件仏像と裁判に関わる全ての情報を開示し、いかなる取材要請にも誠意をもってお答えする所存です。それはこれまでも、これからも変わりません。本件を報道いただき、真実を広く世間に周知することで、仏像公開を一日も早く実現させたいと考えております。


4. 最後に

本件は、契約の履行と所有権、さらには著作権の適正な行使という極めて重要な法的問題を含むものでした。東京地裁は、双方の証拠を厳格かつ公正に評価した上で、法の原則に則り、公正かつ慎重な判断を下し、権利の濫用が認められないことを明確に示しました。

この判断は、契約の誠実な履行を求める社会全体の信頼を守るものであり、また、日本国憲法において保障された信仰の自由という極めて重要な権利が、いまなお不当に制約されている現状を踏まえれば、単に一つの裁判の結論を示すものにとどまらず、法律の持つ本来の意義を改めて浮き彫りにするものであります。

法律とは、人々の権利を守るために存在し、その適正な運用こそが、社会全体の秩序を維持し、人々の心の安寧を保つための基盤となるものです。今回の判決は、まさにその根幹をなす役割を果たし、法が社会の公正と調和を支えるものであることを改めて証明しました。

私たちは、これまで法の適正な運用を信じ、その公正な判断を待ち続けてまいりました。今回の東京地裁の判断により、その信頼が正しかったことが示され、深い感謝と敬意を抱いております。

当寺は、この東京地裁の判断を尊重し、引き続き法の適正な運用のもと、仏像公開に向けて誠心誠意、対応を進めてまいります。今後、高松地裁においても、東京地裁が示した法的原則に則った、正当かつ適正な判断がなされることを強く期待しております。

合掌

讃岐国分寺住職 大塚純司 九拝

境内全域にほぼ段差がなく車椅子で全てお参りできます*個別お堂の参拝には段差がございます

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